本記事は、2024年1月時点の取材・調査内容に基づく過去の取り組み事例です。
記事内に記載されている役職名や名称、数値や状況等は、現在のものとは異なる場合がございますのでご了承ください。
市のPR動画を作ろう!課題解決型のイングリッシュキャンプへ
英語を用いる環境の中で過ごすことにより、コミュニケーション能力や学習意欲の向上を図る「イングリッシュキャンプ」。牧之原市教育委員会はこれまで屋内でALTとゲームやアクティビティを中心としたイングリッシュキャンプを開催してきましたが、子どもたちの満足度はある程度のところでとどまってしまうことに課題を感じていました。「より社会に開かれた場」で開催できれば、「英語を使って何かしたい!」という意欲が高まるのではないか、と考えました。
そこで、牧之原市と弊社とで協働し、プログラムを開発することにしました。まず、英語や国際理解につながる場所として市内にある富士山静岡空港を活かしたい、という案が出ました。「空港を利用する外国人に牧之原市を紹介するCM動画を見てもらえればよいPRになる。その動画を作ることをイングリッシュキャンプ全体のテーマとしてはどうか」と構想が発展していきました。小学5・6年生であれば社会科などで地域の学習をしています。自分たちが知っていることを英語で伝えるのは楽しいし、それが空港で流れれば、外国の人たちに見てもらえるのだ、という期待感や活動への意欲も高まります。
最終的に決まったイングリッシュキャンプのテーマは「牧之原市を海外にアピールしよう!」へと決まり、「海外からの富士山静岡空港を利用した観光客招致のため、牧之原市アピールCMを作る」という内容のプロジェクトが始まりました。
インプットとアウトプットをバランスよく
開催期間は2023年8月3日、4日の2日間。市内の小学5・6年生の希望者を対象に30名が参加、牧之原市に配置された5人のALTも一緒です。ビデオ作りは市総合健康福祉センターでおこない、バスで15分ほどの富士山静岡空港に移動して活動しました。
1日目は主にCM作りに向けたインプットにあてました。まず目標を共有し、“Can”を使った英語のアクティビィティでALTとの交流を図ります。午後は空港へ行き、ALTと交流しながら昼食。そのあとクイズ形式で市内のどんな情報を動画にして伝えればよいかを考えていきました。
2日目はアウトプットとしてCM作りから納品まで完了させます。紹介する市内の場所5カ所を決め、グループで分担して紹介文を作成します。動画の構成はALTと子どもたちが一緒に考え、撮影と編集はインタラックのスタッフがおこないました。午後はできたての動画を持って空港に向かい、現地でお披露目の放映・鑑賞となりました。
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ALTと子どもたちが一緒にCM作りをする様子
「英語を使いたい」86%に
完成したビデオが、空港ロビーのデジタルサイネージに映されるのを待つ子どもたちの表情からは、このキャンプがワクワクする楽しいものだったことがうかがえます。
ビデオの中の“Welcome to Makinohara!”と声をそろえた歓迎メッセージのシーンになると、見ている子どもたちも笑顔いっぱいになりました。
キャンプ実施後のアンケートでは、ほとんどの子どもが英語に対してポジティブなイメージを高め、その有用性を実感したようです。「2023年イングリッシュキャンプは楽しかったですか?」の問いに対して「とっても楽しかった!」は69%、「楽しかった」は28%で、ほとんどの子どもが「楽しかった」と回答しています。
また、「英語をもっと使いたいと思いましたか?」の問いには、「もっと使いたい」が65%、「使いたい」が21%となり、86%の子どもが英語を使うことに前向きになれたことも分かりました。
自由コメントでは「CM作りで英語を話すことができてよかった。2日間楽しい体験をして、英語って楽しいんだ、これってこういう意味なんだ、といろんなことが分かった」「富士山静岡空港を探検したのが楽しかった。他の人と英語で会話するのが楽しかった」「ALTの先生や友達、他学年の人や他学校の子とたくさん話ができて楽しかった」「英語の発音は難しいけれど、覚えられたら意外と簡単だった」などが上がり、子どもたちの英語を使ってみた気持ちや、ALTへの思いなども読み取れました。
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富士山静岡空港ロビーでPR動画が放映されている様子
参加した子どもたちの様子を見て、橋本 勝 牧之原市教育長は今回の取り組みを高く評価しています。
「英語を使って何かしたいという意欲が高く見られたのが成果です。地元のいいところを学びながら、英語で発信する試みは子どもたちにとって新鮮で、楽しくできたのではないでしょうか。授業以外のところで英語が使え、親しめる場が持てれば、英語学習に積極的な子どもが増えるのではないかと思います。」
当時の野村智子 指導主事には、ALT事業会社とタッグを組んで企画・実施できたことにも満足いただいています。
「当日の思いもよらないアクシデントにも、工夫を凝らし、ALTとスタッフが乗り越える様子を見ました。これこそ、将来、子どもたちになってほしい姿だと感動しました。」
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橋本勝 教育長、野村智子 指導主事(当時)
起郷家(きごうか)教育を軸に次代を切り拓く力を育てる
牧之原市は、キャリア教育を「起郷家(郷に学び、自らの将来を見通し、行動を起こす)教育」と名付け、小中9年間のプログラムを軸として子どもたちが段階的に必要な力を身に付けることができるよう教育活動を充実させていく予定です。
「現在、起郷家教育のプロジェクトを立ち上げ、プログラムを立案中で、英語教育もその中に位置づけていきます。市内にはグローバル展開をする複数の日本企業の生産拠点などもあり、外国にルーツを持つ児童生徒も増えています。牧之原の子どもたちには、英語という言葉を使ってグローバル社会で通用する人になってほしいと願っています」(野村 指導主事)
小学校で英語が教科化されたことで、ALTとのティームティーチングのスキルや、その前提となる学級担任や英語専科との打ち合わせなどの重要性は高まっています。企画段階からALTを巻き込んだ牧之原市のイングリッシュキャンプは、教える側の協働性を高め、それが子どもたちの英語を使ってみたい、という意欲につながりました。さらに英語を使う場面を教室の中にとどめず社会や地域に求めた同教委の開かれた視点が、英語を身近に、そして自分事として捉えるきっかけを子どもたちに与えているのです。
