本記事は、2023年12月時点の取材・調査内容に基づく過去の取り組み事例です。
記事内に記載されている役職名や名称、数値や状況等は、現在のものとは異なる場合がございますのでご了承ください。
ALTに学習指導要領の理解が不可欠な理由
子どもたちが未来に活きる「資質・能力」を身に付けるためには、それぞれの先生が、学習指導要領が掲げる各教科の目標や目指す「資質・能力」を理解していることが欠かせません。学習指導要領に基づいて編成された教育課程のもと、単元を構想し指導計画を立てていくことは、学校の先生方にとっては当たり前のことですが、すべてのALTがこうした認識を持っているとは限りません。
そのため、これまでALTが学習指導要領を読み込み、目標やねらいを理解して授業に活かすことは容易ではありませんでした。学習指導要領の英訳版(仮訳)は文部科学省が公開しているものの、いわゆる「解説編」や、各種の解説書などは英訳されたものがほとんどなかったからです。また、ALTの資質・能力向上は各自治体に委ねられているのが実情で、配置したALTに対して、求められる役割の理解や、学習指導要領の理解にまで踏み込んだ研修は「やりたくても難しい」と考えられてきました。
8コースの英語研修とテストでALTの資質を可視化
そこで、弊社は2022年にALTへの研修パッケージ「ALT基礎力テスト(TICA)」を開発。全国の自治体への活用を呼び掛けています。ALT基礎力テストはALTと直接関わる先生方の声をもとに、ALTに求められる「姿勢」と「知識」が身についているかを判定するテストです。テスト前には「役割理解」「規範遵守」「教育目標」「指導計画」などの8コースの英語での研修プログラムがあり、ALTは受講の前後で効果測定としてテストを受けます。合格基準に達すれば日本の学校でALTとして業務にあたれるミニマムな規準を満たしていることが証明され、現場の先生方は安心してALTと授業を作り上げることができます。
任用形態を超え、90人のALTへ研修を実施
静岡県教育委員会は当年度、ALT基礎力テストを活用した県内ALTの指導力向上研修を実施しています。同県は児童生徒が国際社会の中で積極的に多様な人々や文化に触れながら故郷・静岡の魅力を再認識するとともに、世界に発信できるような力を育むことを願って、静岡型の英語教育を展開しています。同年度に、新しくできたALT研修パッケージ「ALT基礎力テスト」を導入しています。
その理由を静岡県教育委員会 義務教育課 指導班の渡部彰 指導主事(当時)は、次のように語ります。
「教育委員会所属ALTについては任用形態、研修体制が異なるので、小さい自治体では、単独で研修会を組んだり、オールイングリッシュで研修会を実施したりすることが難しいという部分があります。そのため、静岡県全体のALTの資質向上をめざして、県主導で研修会を行っていくことが重要であると考えています。

第1回目の研修の様子
また、ALT同士も横のつながりがなく、どんな指導が求められているかが分からないままでいるALTが少なくありません。今回、ALTの研修会と基礎力テストを通して日本の英語教育について理解を深めてもらえればと思い研修を企画しました」。
「理解」から「実践」へ:約8カ月にわたる集合研修の全容
研修対象は県内の小・中学校に配置されているALT約90人。5月~12月までの約8カ月間に渡って計画し、対面での集合研修で4エリアに分けて実施しました。
集合型の研修は2回。6月~7月中旬の第1回研修は「理解」を中心とした講義を行いました。テーマは「学習指導要領と英語教育への理解」、4技能5領域の目標、言語活動の概要と効果のレクチャー、デモレッスン参観などです。11~12月の第2回研修は「実践」で、「幅広い指導方法の実践」がテーマです。子どもの発話を促す言語活動案の作成や、ICT活用例の紹介を取り入れる予定です。
1回目と2回目の研修の前後には基礎力テストを実施し、研修の効果を測定します。また、希望するALTには弊社のALTを指導する「トレーナー」による授業視察を取り入れました。

第1回目研修の様子(アクティビティ)
「難しいトピックも分かりやすく伝わった」希望者には授業視察と助言も
「第1回の研修においては、学習指導要領の内容理解を中心に講演を依頼しました。その概念を、多様な価値観を持つALTに教えることは、非常に難しいことと考えていましたが、対面の研修で模擬授業も取り入れ、ALTが生徒の気持ちになってやってみるということが、ALTにとっては非常に良かったのではないかと感じています。
また、授業視察はALTたちにとって指導の助けになったのではないかと思います。授業を見て評価してもらう機会になかなか恵まれないので、アドバイスをもらい、改善点を指摘してもらえたのは良かったと思います。ティームティーチングの在り方についても、アドバイスをいただけたのが有益でした」(指導主事 渡部彰 先生)
「授業づくりに役立つ」参加したALTから寄せられた、「実践的な学び」への喜び
1回目の研修を終えたALTからは、「授業にもっと言語活動を取り入れ、生徒が、英語で話しながら参加できる方法を学べた」「生徒を自律的な学習に導く技術を学んだ」「生徒や教員との信頼関係を築く方法を知った」「生徒が楽しみながら(授業に)参加できる方法を学んだ」「英語指導の経験が少ない教員に、どのように授業に関わってもらえるかを学んだ。授業の構造についても学んだので試してみたい」など、授業づくりに役立つ研修経験ができた喜びが伝わってきました。
未来への展望:チームワークを高め、よりよい英語授業づくりを目指して
研修後のアンケートを見ると、授業ですぐに使えるアクティビティや教材など実践的なものを求めている様子も分かってきました。こうしたニーズが把握できるのも、主催する教育委員会側のメリットになります。また本研修は、第2回目へと続き、ALT基礎力テストの結果や研修前後のALTの変容は最終報告の形でまとめ、翌年度に活かしていく予定だといいます(2023年当時)
「多様な価値観、考え方を伝える活動にALTは貴重な人材です。小・中学校の指導体制の構築、教職員の資質向上に努める中で、ALTの資質向上研修は1つの柱と考えています。第2回目の研修では、ALTも納得し、授業で使いたい、やってみたいと思えるような、子どもたちの力を伸ばす指導法、教授法、実践を期待しています。そして、これまで以上にALTと教員とがチームワークを高め、よりよい英語の授業を作り上げることを願っています」(指導主事 渡部彰 先生)
